2010年8月3日火曜日

本書いた横田が打ち明ける 「男女」 のこと。---After talk, on the web. 「18歳ロケット」

2010年7月3日・4日に、
東中野RAFTで公演された、
MacGuffins処女作「男女」を。
演じられた短編4本を。
ひとつひとつ、ふり返ってみようか。という。




それぞれ離れ離れの旅立ちとなる高校卒業前の、あの「大人」直前の微妙な時期。
今、告白しなければ……
好きな女に向けられた男の欲望を最大出力でハダカに表現した力作。
 あこがれのマドンナへのコクり合戦が思わぬ結末になる構成はなかなかお見事。
観ていて35年も前の自分にも、あれに似た青春時代があったことを思い出した。
(tetorapack、CoRich舞台芸術「男女」レビューより一部抜粋)


視聴覚室で告白をするとカップルになれるとの噂を聞きつけて、
大好き中野さんに告白を決めた宮本は坪井に冷やかされる。
そこへやってきた土田は坪井とケンカになるが、
土田は坪井に告白しふたりは部屋を後にする。驚きを隠せない宮本。
だが、噂はどうやら本当らしい。
間を置かずに今度は真淵が、更にお目当ての 中野さんも部屋に来て、
宮本と真淵はどちらが先に中野さんに告白をするか揉める。
じゃんけんで順番がきまったところで今度は島貫という男がやってきた。
何 喰わぬ顔をして井伏鱒二全集1を読みはじめる島貫に、
告白の邪魔になると島貫を追い払おうとする宮本と真淵。
部活動で視聴覚室を使っていると応戦する島貫。
そして今、井伏鱒二が好きだと島貫に告白した中野が、
『たま虫を見る』が掲載されている井伏鱒二全集2を借りるため、
島貫の後について部屋を出ていく…。

視聴覚室に入ってくる人々の認知度のズレ(勘ちがい)から生まれる
予期せぬ笑いをテーマに『漁夫の利』を実例化したような話。
同時刻にふたりの男子から呼び出されてた中野さんが彼らを目の前にして、
「あら、おふたりさんお揃いで。」
とかしらばっくれて弄んでもよかったような気はした。
(Hell-see、CoRich舞台芸術「男女」レビューより一部抜粋)




「男女」でやった4本の短編のタイトルは全部、
台本がある程度完成してから
メンバー(古田島、水越、相川、横田)みんなで、
会議して決めたんですよ。
中野のサイゼリヤでメシ食いながら考えて、
まあー18歳ぐらいの時の勢いってすごいよね。
ぶっ飛んでるよね。
じゃあ18歳ロケットってどうよ?ってなったんですけど。

それだったら、
18歳の男が、どうにもならない気持ちとか、性欲とか鬱憤とか、
そういうのをエネルギー源にしてロケット飛ばす話も、
おもしろかったんじゃねえかなと思いました。
そしたら多分、ものすごいくだらないSFになってたけど。


4本の中で一番最初にできた本で、
ありがちな設定から、
すごくベタな展開をする話。
じつはぼくなりのスタンダードです。
好きな女の子に告白しよう!っていう、そのまんまの話。

告白しよう!って事になって、
でもやり方わかんないから誰かに相談すると、
男友達はほとばしるリビドーに逆らわず、
セックスするの?しないの?
するならどんなセックスするの?どこでするの?どうなの?
みたいなことを笑いながら聞いてくるわけですよ。





上演時にはカットされましたけど、こんなくだりもあって。


坪井「おれなんかなあ、中学の卒業アルバムの個人写真見ながら、
学年全員の女で一回ずつやってやろうと思ったことがあって」
宮本「え、え、え、なにやってんの!?…最低だなお前」
坪井「まあそうなんだけど、
『どうしてもコイツでは無理だっ…』てヤツが、何人かいるのよ」
宮本「何人か!?お前、中学何クラスあったんだよ」
坪井「8」
宮本「8クラスあって『何人か』!?」
坪井「いや、けっこういけるんだよ、俺ストライクゾーンが広めで」
宮本「広めなんてもんじゃねえよ…ほんと最低だなお前」



こういう武勇伝を得意げに話してしまうのが、
男子高校生だよなあ。

でも、
おい付き合う=セックスかよ、違うだろ!
もっとさあ、こう、いろいろさあ…
「お前がそばにいたら、おれはそれで満足なんだよ」
みたいなのあるだろ!
おれはねえ、ヤりたいから付き合うんじゃないんだよ!
でも付き合うなら、そういうこともしてみたい…
いや違うぞ!断じて違うぞ!
みたいな、ピュアな男子高校生もいて。



そういうのも全部含めて、
学生時代にしかないあの「フワフワした感じ」を、
出したいなあと思いながら書いたのです。
「男女」というテーマでいくなら、ここから。
高校からはじめるのがいいだろうと。


不器用でまっすぐだからこそ全力で間違うあの感じと、
おれには関係ねえけど面白いから見ててやるよっていう友達のノリと、
不慣れだからこそのオクテさ。
でも勢いだけは持て余すほどあって。





以下、劇中のセリフを抜粋しながら。







坪井「この学校の視聴覚室で告白して付き合い始めたカップルは、
ずっと幸せでいられる、みたいな話があってね」
宮本「うわ、何それ!?ヒデぇ!!
そんなときめきメモリアルみたいな話あんの!?」

「卒業式の日に、校庭のはずれにある伝説の樹の下で、
女の子からの告白で生まれたカップルは永遠に幸せになる」
っていうのが、ときめきメモリアルの設定。
ときメモはやったことありませんけれど、こんな伝説あったら、
卒業式の日、樹の周辺にすごい人だかりできて告白どころじゃないよなぁ。
たぶん坪井(水越健)と宮本(渡慶次信幸)の通う高校の視聴覚室も、
同じような事になるんだろうなぁ。とか。




坪井「ホントお下劣だなお前」
宮本「お下劣って。
俺その言葉こち亀ぐらいでしか聞いたことないんだけど」

両ちゃんはエロいんじゃないんですよ。お下劣なんです。
お下劣っていう言葉の響きがこんなに似合う人いないよ。>両津勘吉



島貫「そんななぁ、ここで付き合うと幸せになれるとか、
そんな話にすがらないと折れちゃいそうなくらい自信ないなら、
そもそも告白するんじゃねえよ!!勝手に思ってればいいだろ!!
俺ずうっと外にいたよ!
お前らみたいなもんに気を使って外にいてあげましたよーーー!
イライライライラしながらさああああ!!
そしたらグダグダグダグダ長いこと、
それがお前らみたいな奴が声高に言う『青春』かよ!
なにが青春だよ青春青春うるせえんだよ!!
青春してると偉いのかよ!!
青春するのは別にいいよどおーぞどうぞご勝手におやりください、
でもなぁ他人に迷惑かけんなよぉ!!
お願いだから見えないところでやってくれよぉ!!
ここは日本文学研究部の部室なんだよ!
恋愛スポットじゃねえんだよ!!
そんなに幸せになりたいなら、
縁結びの神社で告白すりゃいいじゃねえかよバーカ!!
帰れ帰れ帰れ帰れー!お前らなんか嫌いだあああああ!!」

「ここで告白すると幸せになれる」伝説がある視聴覚室を、
部室として使っている日本文学研究部の学生、
島貫のハートフルな叫び。ノーカット版。
上演時にはだいぶカットしました。

告白したり付き合い出したり、
そういうことを普通にできる奴とか、
ガタガタだけどがんばればなんとかできる奴の影に隠れて、
クラスにひとりふたりはいる「なじめない奴」の叫びは、
たぶん当時の学生同士の間なら、
「うわまたあいつ変な事言ってる」「キモーイ」で黙殺されるのだけど、
そうはさせねーよ!だって見事なまでに正論なんだもん!!




なんにも悪い事してないけど、
正しい事をしてても評価されるわけじゃなくて、
それどころか邪魔者あつかいされて、貧乏くじひいて、
気を使ってるのにそれも報われないで、
偏見にも負けず、
孤立無援でそれでも自分をつらぬいて。

18歳ロケットの登場人物の中で、
一番まわりが見えていて、一番ガマンを知っていて、
一番オトナに近かったのが彼だなあ、と思います。
たぶん学生時代にこんな奴いたら、
真っ先に「つまんない奴」「怖い」って思われるタイプだけど、
絶対話してみたらおもしろいから。
コミュニケーション不足で、あんまり他人と接してないから、
いざ仲良くなるとすごく厄介な奴なんだけどね。





18歳ロケットの登場人物の名前は、
「宮本から君へ」
というマンガから、取りました。




くそまっすぐで暑苦しいマンガで、
だから痛いし、苦しいし、つらい。
「すばらしい人」と「立派な社会人」って実はぜんぜん違うもので、
社会人としては失格だけれど、
人として折れたくない部分があって、そこを曲げずにいって、
それはオトナからはひどく的外れに映るけれど、
そのエネルギーやまっすぐさって、すごく素敵なものだよなあ。
と思うのです。
もう20年近く前に書かれたマンガで、
日本の20年前っていったらまさにバブルのまっただ中で、
そんな時代にこれが生み出されたのかと思うと、
なんて言ったらいいかわからなくなるのですが、
これは間違いなく今の時代に読まれるべきマンガだし、
とても素敵なものだと思います。


「宮本から君へ」の宮本は、
エレファントカシマシの宮本浩次から取られているそうですよ。
エレカシいいよエレカシ。
とりあえずgood morningから聴いてみてください。

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